(date) 2015.10.3 Sat. / (member) まっきぃ / (type) 無雪期日帰り / ルート(KML) / (edit) 2017.1.30 Mon.
八ヶ岳に張り合う三角帽子たち 富士見 2015年10月
歩く距離が短くて疲れず,初心者でも簡単に登れて,頂上からの眺めが最高で,ごはんがおいしくて泊まれる山小屋がある. そんなご都合主義な山が信州には存在する.南アルプスの北端にある入笠山だ.
もともと,夏の仙丈ヶ岳がダメそうなときに入笠山に行ってみようかという話を A 叔父とはしていたのだった. ただ,そのときのボクはこの山にまるで魅力を感じていなかった. 高い山でもないし,ゴンドラリフトでさっさと登ってしまえるのでは登る楽しみもないじゃないか,と思っていた.
気が変わったのは,なんのきっかけか入手した,バックカントリースキーのルートガイドにこの山が掲載されていたことだった. わざわざスキーを履いて出掛けるような山だというなら,あながちナメたものでもない. ルートガイドでは,富士見パノラマスキー場のゴンドラリフトを利用し,頂上直下や,スキー場跡地だという「お花畑」で滑降したあと,山小屋で一服するのもよい,とあった. たかだか 2000m 弱の山に山小屋があることが不思議に思えたし,その小屋が「マナスル山荘」という変わった名前をしていることも興味を惹いた.
しかしゴンドラに乗ったのではやはり物足りない.やはりここは下から登ってやるべきだろう.となるとまずはルート選定からである.
地形図を見ると,定番とされる沢入ルートは,駐車場からの登りはどうということはなくて物足りない.そこまでの車道歩きは逆にだるそうである. 青柳からのルートも「山と高原地図」には案内があるが,「車道(悪路)」との記載があって気が滅入る. 「悪路」でなく「車道」に.車道は勾配が緩過ぎて歩く距離が長くなるからイヤなのである.
※もっとも,翌年の再訪で,青柳ルートもなかなか「ご機嫌」な道だったことが判明する.
地形図を見ていると,すずらんの里駅から南西に栗生地区の北端(952m 地点)まで進み,そこから思沢川の源流に向かってゆく形で歩けそうな道が見つかった. 地図表記は破線つまり徒歩道であり,勾配も山道としてはふつう程度に見えた.標高 1500m あたりで青柳からのルートに合流し, そこからは車道歩きとならざるを得ないが,青柳ルートよりは直線距離もずっと短いし,このルートなら下から歩くのによさそうだった.
実際はそこまで事前に計画を練っていたわけでもなく,前夜に思い立ってさっさと荷造りして出掛けたように記憶している. 10月始めにしては寒い朝だった.
0737すずらんの里駅着. 甲府あたりまでは曇っていたのが信じられないくらいの青空だった.そして寒かった.
人里にさりげなく開かれている登山口 富士見 2015年10月
0810入山. しばらくは,里山らしい道を歩くのだが,進むにつれ道が荒れてくる.
鹿除けのゲートをくぐる 開けたら閉めよう(振り返って撮影) 富士見 2015年10月
手前から奥に向かって,一応道のはずなのだが 思沢川ルート 2015年10月
道には石が,砂利が,枯れ枝が積もり,しかもその間を水が流れている. 傾斜はたかだか 20 パーセントくらいだと思うのだが,足元が安定せず,坂の下へと滑り落ちそうになる. 思わぬところでこの日一番の難所に出くわした.
しっかり屈んでくぐらないとザックが引っ掛かる 思沢川ルート 2015年10月
倒木 根の絡む地面が丸ごとめくれてしまっている 思沢川ルート 2015年10月
標高 1150m 地点で完全に道をロストした.今居る場所はわかっているが,道のほうがなくなってしまった. 地形図とにらめっこ.このあたりはちょうど沢筋と沢筋の間の張り出した部分の下なので,地形に気をつけて登れば青柳ルートとは合流できる. 斜面は急なので,自分の判断でジグを切って斜登高してゆかねばならない. だいじょうぶだ.進もう.
過ぎ行く者は木こりか登山者か 思沢川ルート 2015年10月
視界上方に棚状の地形を見つけ色めき立つ 思沢川ルート 2015年10月
青柳ルートに合流しひと安心 思沢川ルート 2015年10月
1050青柳ルートに合流.振り返ってみるが,どこに道があるのやら. ここまで来る,途中何度も視線の先を鹿が走って逃げてゆくのを見かけた.つまりこちらより先に向こうは気付いて動いているわけだ. 日本の山に人間を狙う動物がいなくてよかったと思う(クマは微妙だけれど). ここからも短くはないのだが,道があるというだけで安心感は段違いであって,あまり歩いたなという実感がこのときには残らなかった.
お花茶屋 閉ざされてはいるが綺麗に保たれている 青柳ルート 2015年10月
御所平 天文ドームのある建物はマナスル山荘新館 2015年10月
1210御所平着.先に山頂を踏もうかとも思ったが,マナスル山荘本館で休憩.昼食としてなめこ汁を注文した. 味は塩分控え目だった.値段がほかのまとまった食べ物とあまり変わらないので,しっかり食べたければうどんやシチューやカツ丼を注文したほうがいい. なめこはけっこう気前よく入っていたと思うが,これにご飯を追加注文するにしても,もう一品ほしくなるところ. 「なめこ汁○○定食」みたいのを希望.
入笠山より蓼科山と八ヶ岳を望む 2015年10月
1305登頂. 写真でわかるように山頂は広く丸い.遮るものがないので風が吹くとやや寒いが,その分眺望は最高だ. 富士山・奥秩父・八ヶ岳・蓼科山・浅間山・車山・槍穂・乗鞍・おんたけ・中ア・南アと,360度どこを向いても名山ばかりである. 天気がもっとよければ白山まで見えるというからすごい.
※白山はどうかと思ったが,野麦峠スキー場からは見えたのであながちでもないかも知れない.
ドイツ語の難しい名前のお菓子(リンゴ入り) 紅茶は自前 絶景の余韻に浸りつつ マナスル山荘本館 2015年10月
1415御所平帰還. マナスル山荘本館に戻ると,お菓子棚の中においしそうな,ドイツ語の難しい名前(名前忘れた)のお菓子(リンゴ入り)があるのを見つけた. その上「秋季限定」とある.これ,食べなきゃ,というわけでいただくことにした. 山小屋だというのに皿に載って粉砂糖にホイップクリームまでかかって出てくるのだから感激である. 西穂山荘で食べたチョコレートケーキもうれしかったっけ. お茶を飲みつつ,気象予報士でもある山荘のご主人に,この日の天気に関して二,三教えてもらった.内容は忘れてしまったけれど.
※マナスル山荘本館にお菓子を卸している原村「エルフェン」のメニューを見る限り「アプフェルシュトゥルーデル」だろう.
夕暮れの空に赤く映える八ヶ岳 松目 2015年10月
1455山荘発. 1610沢入登山口着.ここから麓の松目地区までさらに1時間歩く.そこからさらに1時間歩き,1807富士見駅着. ここからは後始末の部分なので歩いているのはほとんど辛いだけなのだが, 夕暮れ時の松目地区から眺めるアーベントロートの八ヶ岳に救われた. 赤岳の山頂に光が一点輝いていたのだが頂上山荘の灯りだったのだろうか.
松目地区の 1000m 地帯をゆく 2015年10月
富士見駅 2015年10月
ボクはその冬,再びこの入笠山を訪れた.スキーを履いて.
今後,入笠山とは長い付き合いになるだろう. この山行は,ボクにとっては記念すべき初入山であった.